暑中見舞い申し上げ候。 伊賀崎道順に御座います。
秋を目前にまだまだ暑さ続く折、輝血の実もその薄衣から赤い顔を覗かせて参りました。
暑中見舞い申し上げ候
皆様お加減は如何でしょうか?
いつも時候の挨拶も無しにご無礼しております伊賀崎に御座います。
さて本日はお盆も近いって事で小咄を少々…
私、伊賀崎道順は服部半蔵保長様の秘術にて現し世に舞い戻った訳ですが、それはそれは驚嘆の一言でありました。
まぁ私も忍びなどと言う物をやっておりましたので、勿論、殺生も日常茶飯事。
そこまで信心深く無い私であっても、決して極楽に行けるなんて思っちゃおりませんでしたが、目が覚めれば…
いやはや想像していた地獄とはかなり違っておりましたね。
行き交う人々の言葉も違えば、様相も違う、何より世界が丸っと違う訳ですから、ここが此岸ではないだろうとは思いましたが…
なんとも…
奇妙奇天烈な地獄で御座いますなってのが正直な感想でした。
しかしまぁ今の日本と言うのは本当に極楽みたいなものですなぁ…
暑さ、寒さもちょいと建物の中に入れば別天地、飢えも病も遠い存在で…
私が存命だった頃は正成殿の口上の如く『時は戦国、世は地獄』ってなもので、正に死が身近な存在、とにかく生きるのに必死でした。
いつ死ぬるとも限らぬ命故、どうやって生きるか?が優先し、お武家様などは『命を惜しむな、名を惜しめ』なんて仰ったりします。
まぁ私は忍びですので、いやいや命があっての物種で御座いましょう。と考えてしまいますが…
その様な世であっても、花鳥風月、四季の移り変わりに心躍らせ、仲間達と共に生きていた事は、地獄の様な日々の中でも輝かしい思い出でありました。
最初にこの世が丸っと変わってしまったと申し上げたものの、現し世に舞い戻り、数々の忍務を行いますれば、成る程、人の営みに反して、人の本質ってのはそうそう変わるものじゃありませんな。
確かに切った張ったの戦は少なくなりましたが、どこまでいっても『名を残さんとする戦』自体は無くなってはおりませなんだ。
名を残し、その存在を周りに刻みたがるのは人としての性なんでしょうかね…
かく言う私も名を残せたからこそ、保長様に魂を呼び戻して頂けましたし、今のこの身体を離れようとも、この魂は名と共に生き続ける訳ですので、この性に従って生きるのも一興じゃ御座いませんか。
平成の戦国に生きる皆々様…
世の地獄にお疲れ申されば、どうぞ隠密隊をお尋ね下さいまし。
一寸一杯やりながら取り留めの無い与太話に興じますれば、地獄に徒花とて、きっと良き思い出になりましょう。
今週の日曜日、名古屋城に登城しておりますれば、この道順、皆様のお越しを心よりお待ちしております。
伊賀崎道順
【次回出陣情報】
日時:平成28年8月7日(日)
1回目 11:45~
2回目 14:45~
場所:名古屋城 正門前広場エリア
*各回30分の演武の後、写真撮影会をおこないます。
*雨天時には中止となる場合がありますのであらかじめご了承ください。